蜘蛛男 |
| 江戸川乱歩(著) |
| 春陽堂文庫 |
| ★★★☆☆ |
東京創元社による「内容紹介」は以下の通り。
……え、絹枝の心臓、えぐられていたっけ? というのがこの「内容紹介」を読んだ感想で、 確かに本文を読み返してみると「鋭利なる刃物で心臓部をえぐられていた」と書いてある。 それはともかく、「ここでちょっとお話の向きを変えて、この物語のもうひとりの大立て者である畔柳博士のことに移るが」とか、 「さて、お話を前にもどして、野崎三郎のその夜の行動を、少しくしるしておかねばならぬ」とか、「お話は二十分ほどまえにもどる」とか、 「お話は変わって、新宿から二時間足らずの工程、(…)」とか、場面展開における異常な慎重さが印象的だ。 「お話を『前』にもどして」と「お話は二十分ほど『まえ』にもどる」と、字句の違いも拘りなのかどうか気になるところだが、 江戸川乱歩という小説家は、必要以上に真面目なところがあるとの感触を受ける。シークエンスを繋ぐ度に何かと説明せずには要られない几帳面さ。もっと適当でもいいんじゃないの? という気もするが、 自然に繋ぐにはかなりの労力を要するので、ついつい諦めがちな目まぐるしい展開を、この執拗な合図という戦術で、さしたる葛藤もなく、 可能にしているとも言える。自由を棄てて得る自由という感じか。 U.U.
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