箱男 |
| 安部公房(著) |
| 新潮文庫 |
| ★★★★☆ |
1973年に新潮社より刊行された安部公房の『箱男』は、新潮文庫裏表紙のあらすじによれば、
であるが、何はともあれ、『方舟さくら丸』、『カンガルー・ノート』といった 晩年の長編の手法がここに完成されている点が印象的だ。 荒唐無稽ともいえる幾多の鮮烈なイメージを繋いで(しかし、繋ぎすぎず)物語を縒って(しかし、縒りすぎず)、 補完と放置の見極めにより、縫合痕を残したままイメージとイメージの連鎖・落差を形作る。 そこで物語(明晰)と曖昧(神秘)を匙加減することによって、空間を構成するという手口に違いない。 しかし、もちろん、ここで繰り広げられているのは単なる匙加減なんてものではなくて、尋常じゃない推敲により、 いつしか「物語」と「曖昧」の配合といった小賢しくも技術的な問題など遥か彼方、 作品は「明晰な神秘」というあり得ない代物(矛盾そのもの)に辿り着いている。 だから、「見る/見られる」という縦糸をアリバイのように通していても、恐らくこれは長編小説ではない。 贋長編小説? いや、全ての長い小説が長編小説である必要などどこにもないし、 本物と贋物なんていつでも交換可能なのだから、本物が贋物よりも優れているなんてもう誰も信じてはいない。……え? そういう話じゃなかったっけ? 「でも、このノートは本物なんだよ。(…)」(p.189)。 尚、見開きの紹介文は以下の通り。 安部公房 U.U.
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