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秋成私論(『安吾のいる風景 敗荷落日』)


石川淳(著)
講談社文芸文庫

★★★★★


 『雨月物語』を石川淳の『新釋雨月物語』片手に読んでいて、ついでに「昭和三十四年六月二十七日、 上田秋成沒後百五十年記念講演會にて。速記ノママ」と記された「秋成私論」に目を通す。

 『雨月物語』に触れ、

オバケが出て來ても、あの世へ行ったのがまたこの世へ戾って來てあの世へ行くという仕掛けではないのです。 あの世へ行くという途中で出て來る。(…)これは實在の世界と未知の世界という二つの配置があって、同時にその双方に關係する、つまり論語にいう「両端をたたく」。 端が二つあって、それを同時にたたかなければならない、そうしなければ世界像は完全につかめない。そういう世界觀です。


というくだりがあり、甚だ印象的だった。帰郷⇔再訪のサイクル、 すなわち「この世」と「あの世」の反復運動ではなく、「ただ次元からいうと實在の世界とほとんど相似のようなところに別天地がある。未知の世界がある。」 という「實在」と「未知」の並行世界の絶え間ない滲み合いという状態も確かに面白い。

U.U.

▼「秋成私論」は講談社文芸文庫『安吾のいる風景 敗荷落日』に、『敗荷落日』はちくま文庫『新釈雨月物語 新釈春雨物語』に収録。

特集:帰郷・再訪