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The Time Traveler's Wife


Audrey Niffenegger(著)
Vintage

★★★★☆


 Audrey Niffeneggerの"The Time Traveler's Wife"を読み返すつもりなどなかったが、本棚の本を並べ替えている途中にペラペラめくっていたら止まらなくなったわけで、この本は実際そういう魅力――宙吊り状態の解消のために次から次へと読み続けなければ収まらない――を有している。

 自らの意志とは関係なくタイムトラベルしてしまう男の病気のため、女が初めて男と出逢うのは女が6才・男が36才の時なのに、男が女に初めて出逢うのは男が28才・女が20才の時だという、Girl meets boyとBoy meets girlの非対称を設定しただけでも、この小説は(些か漫画的なきらいはあるものの)際立っている。

 この"The Time Traveler's Wife"は、予定説的な世界観を推し進めたという点で、flash-forwardを多用したMuriel Sparkの"The Prime of Miss Jean Brodie"から補助線を引くことも可能かも知れないが、SFの枠組みに収まっているし、Daily Telegraphの評の通り、語りが"Utterly convincing"なため、良くも悪くも世界観自体が浮き彫りになることはない。  

 また「帰郷」の観点から眺めると、時間旅行をする夫という内容が内容だけに、当然のように、最終ページはHomerの"The Odyssey"で締め括られており、本文中でも『オデュッセイア』は、妻Clare側から1回、夫Henry側から1回、対称に計2回触れられている。  


CLARE: (...) Every day I work, but nothing ever materializes. I feel like Penelope, weaving and unweaving.
And what of Henry, my Odysseus? Henry is an artist of another sort, a disappearing artist. (p.274)


 HENRY: (...) What an uncertain husband I have been, Clare, like a sailor, Odysseus alone and buffeted by tall waves, sometimes wily and sometimes just a plaything of the gods. (p.503)


 引用のためにページをめくっていたら、また読み始めそうになってしまった。

U.U.

特集:帰郷・再訪